鳳凰の島にて

勇太と凛が神主に用意された部屋へ連れられた時の事。

鬼鮫編。

「…おい、ディテクター」
「何だ?」武彦が勇太を、神主が凛を布団に寝かせた所で
鬼鮫が不意に口を開いた。
「不健全だ」
「は?」
「…まだコイツらは十五歳やそこら…。そんな多感な時期に
同じ寝室で隣りの布団など…」
「…鬼鮫」武彦が鬼鮫の肩を叩く。「不健全な妄想は程々にし
ておけ―って、冗談だ! 刀をしまえ!」
「ディテクター…、やはりさっき斬り捨てておくべきだったな…」
「…お前は相変わらず冗談が通じない男だな…」武彦が銃を取り
出す。「良い機会だ。そろそろ白黒つけてやろう…」
「望む所だ…」
「…二人とも、どうなさいました?」殺気を感じたエストが部屋へ
訪れる。
「…。」
「……。」
「…あら、こんな光景…」エストが勇太と凛を見て驚く。
「フン、見ろ。驚くに決まって…―」
「―護凰の神主。布団が別とはどういう事です?」
「そうだ、やはりそこに…おい」鬼鮫がエストを見るが、エストは
構わず続けた。
「凛に既成事実を作らせてしまえば、少年に拒む事は出来なくなる
と、何故そこに気付かないのです」
「ややっ、これは失敬…!」
「…ディテクター、古いのか、俺は…?」
「…いや、さすが天使様だ。スケールが違い過ぎて俺もどうすれば
良いのか解らん」
「…任務に戻る」
「おい、待て! この事態を収拾するのはお前のまともなツッコミだけ
しか…―」
「…古いのか、俺は…」ブツブツと呟きながら鬼鮫は歩いて行った。

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『護りの巫女・旅立ちの刻』

 ―勇太と武彦がこの地を訪れたあの日から、もうすぐ半年が経とうとしていた。

「はぁっ!」

 神気に触れたお札が魑魅魍魎の身体へと舞い、光りの彼方へ消し去る。

凛が呼吸を整えながら周囲を見回す。どうやらある程度片付いたらしい。

―――

――

「この地は元々霊気や妖気が溜まり易く、私と分身の私がそれらを吸収しなくなり、

魑魅魍魎達が生まれ始めています」

 ある日、時折洞窟へと向かったエストに理由を尋ねた凛に、エストがそう告げた。

「魑魅魍魎が?」

「はい。彼らは人に害こそ加えませんが、集まり過ぎれば話しは別です。そこで、

定期的に私があの中にいる魍魎を祓う事でバランスを保たせていたのです」

「…そうだったのですか…」凛が小さく呟いた。「…あの、エスト様…。私は―」

「ーどうすれば強くなり、あの子の元へ行けるのか、ですね」

「―ッ!」凛が思わず目を見開く。

「…凛、貴方の神気は護凰の血の中でも、右に出る者がいない程の才覚を秘めています。

恐らく、鍛えれば私とほぼ同等の力を持つ事も可能になります」

「私が…エスト様と…!?」

「そうです。貴方の力は、その強大な力の一端を制御して出しているに過ぎません。

それを操る程の実力がなければ、彼らの立ち向かう戦いには足を踏み入れる事は出来ません」

「……。」

「貴方がこの地の魑魅魍魎を一人で倒せる日が来れば、私からIO2の鬼鮫さんに貴方の面倒を

頼んでみましょう。外界を知り、その力を洗練するチャンスを与える事が出来るかもしれません」

「…ほ、本当ですか…!?」

――

―――

 そして今日、それを行う為に一人で洞窟の中へと足を踏み入れていたのだ。

――。

「…(…勇太、憶えてますか? 私に全てを話してくれたあの日の事を…)」

 ―初めて着た洋服。

 ―初めてデートをした自分。

 ―初めて、恋をした…。

「…(どうすれば解らず、手を触れるだけで、私は…)」

 ―胸をきゅっと押さえつける。

「…(貴方を想うだけで、胸がこんなに締め付けられてしまう様に…)」

 ―時が経つ程に、私は貴方を好きなっていく。

「…(不安で、眠れない日もありました…。忘れられてしまうんじゃないかと…)」

 ―叫びたくなる程、痛いくらい、苦しいぐらいに貴方に…

 ―私は、恋してる…。

――。

「凛、気を付けるんじゃぞ」

「凛」エストが凛を抱き締める。「行ってらっしゃい、私の可愛い凛…」

「…はい…」凛がエストの腕の中で、そっと目を閉じて返事をする。

「…行ってきます」

 ―そしてこれから、貴方に会いに行きます…。

カテゴリー: 01工藤勇太, おまけノベル(白神WR), 白神怜司WR(勇太編) パーマリンク